教科書について
教科書供給業者
教科書の発行の指示を承諾した発行者は、教科書を各学校まで供給する義務を負います。しかし、教科書発行者自身が各学校まで確実に教科書を供給することは事実上困難です。そこで教科書発行者は、この義務を履行するために、次の教科書供給業者と教科書供給契約を結んで、供給を行っています。
(1)教科書・一般書籍供給会社 (特約供給所)
都道府県ごとにおおむね1箇所ずつあり、その数は全国で53箇所です。教科書・一般書籍供給会社は、その管内の教科書取扱書店の公平な選定、教科書の需給調整、過不足調整、残本の回収と返送、教科書代金の回収等を行います。また、一般書籍や教材等の卸売も行います。
(2)教科書取扱書店 (取次供給所)
教科書取扱書店は、教科書を学校に直接供給する機関であり、通常は一般の書店がこの業務を行っています。全国に2,614箇所あります。(令和6年4月)
教科書供給の仕組み
発行者は教科書・一般書籍供給会社や教科書取扱書店へ送本し、教科書取扱書店から学校へ供給されます。(自ら荷造り発送を行う設備を有しない発行者は教科書の配送や代金回収等の業務の全部(又は一部)を配送業者等に委託しています。)
なお、送本終了後における追加注文の場合は、原則として教科書・一般書籍供給会社を経由して供給される仕組みとなっています。

■主な根拠法令
・発行法第10条
・発行法施行規則第18条、21条
教科書が使用されるまで
教科書が学校で使用されるまでには、いくつかの重要なステップがあります。
著作・編集
現在の教科書制度は、民間の教科書発行者による教科書の著作・編集が基本となります。
各発行者は、学習指導要領、教科用図書検定基準等をもとに、創意工夫を加えた図書を作成し、検定申請します。
検定
図書は、文部科学大臣の検定を経てはじめて、学校で教科書として使用される資格を与えられます。発行者から検定申請された申請図書は、教科書として適切であるかどうかを文部科学大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会に諮問されるとともに、文部科学省の教科書調査官による調査が行われます。審議会での専門的・学術的な審議を経て答申が行われると、文部科学大臣は、この答申に基づき検定を行います。教科書として適切か否かの審査は、教科用図書検定基準に基づいて行われます。
採択
検定済教科書は、通常、一種目(教科書の教科ごとに分類された単位をいう。例:小学校「国語」(1~6年)、中学校「社会(地理的分野)」、高等学校「数学Ⅰ」)について数種類存在するため、この中から学校で使用する一種類の教科書が決定(採択)される必要があります。採択の権限は、公立学校については、所管の教育委員会に、国・私立学校については、校長にあります。採択された教科書の需要数は、文部科学大臣に報告されます。
発行(製造・供給)及び使用
文部科学大臣は、報告された教科書の需要数の集計結果に基づき、各発行者に発行すべき教科書の種類及び部数を指示します。この指示を承諾した発行者は、教科書を製造し、供給業者に依頼して各学校に供給し、供給された教科書は、児童生徒に渡され、使用されます。

教科書の無償給与
義務教育教科書無償給与制度の趣旨
義務教育教科書無償給与制度は、憲法第26条に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、我が国の将来を担う児童生徒に対し、国民全体の期待を込めて、その負担によって実施されています。
教科書無償は、義務教育無償という理念の下に広く世界中で行われていますが、殊に我が国においては、教科書の役割の重要性から、その使用義務が法律で定められており、就学義務と密接な関わりのあるものとして、授業料の不徴収に準じて教科書を無償給与すべきことと考えられます。
また、この制度は、次代を担う児童生徒の国民的自覚を深め、我が国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり、同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。
義務教育教科書無償給与制度の実施の経緯
この制度は、「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」(昭和37年3月31日公布、同年4月1日施行)及び「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」(昭和38年12月21日公布、同日施行)に基づき、昭和38年度に小学校第1学年について実施され、以後、学年進行方式によって毎年拡大され、昭和44年度に小・中学校の全学年に無償給与が完成し、現在に至っています。
令和6年度政府予算には、義務教育教科書購入費等として、約471億円が計上されています。
無償給与の対象
教科書無償給与の対象となるのは、国・公・私立の義務教育諸学校の全児童生徒であり、その使用する全教科の教科書です。
また、学年の中途で転学した児童生徒については、転学後において使用する教科書が転学前と異なる場合に新たに教科書が給与されます。
■主な根拠法令
・憲法第26条
・学校教育法第34条
・無償法
・無償措置法
教科書無償給与の流れ
(1)国による教科書の購入
文部科学大臣は、無償措置法の定めるところにより、採択された教科書について、発行者と購入契約を締結します。
教科書の購入については、文部科学大臣は発行者に対し、一定の割合で教科書使用年度の前年度に、購入費の一部をあらかじめ支払うことができることとなっています。
(2)発行者による教科書の送付
発行者は、教科書・一般書籍供給会社、教科書取扱書店等の教科書供給業者に依頼し、作成した教科書を各採択数に応じて全国各地に送付します。送付された教科書は、通常、教科書取扱書店に保管され、学校に納入するための準備が行われます。
(3)学校の設置者等からの教科書取扱書店への納入指示
教科書は、国から学校の設置者・校長を通じて無償給付されることとなります。これらの設置者等は、発行者の供給代行者である教科書取扱書店に対し、教科書の納入について、その冊数、場所、期日等を指示します。
(4)児童生徒への教科書の給与
教科書取扱書店は、納入指示に基づき各学校へ教科書を納入します。納入された教科書は、児童生徒に給与されますが、その際校長は、教科書の無償給与制度の趣旨を児童生徒に十分説明して給与することとされています。

■主な根拠法令
・無償措置法第1条、第3条、第4条、第5条、第6条
・無償措置法施行令第1条
・無償措置法施行規則第1条
・会計法第22条
・予算決算及び会計令臨時特例第3条